JETROの調査では、2025年にベトナムの日系企業の67.5%が営業黒字を見込み、2009年以降で最も高い割合となりました。今後1~2年で事業を「拡大」するとした企業も56.9%で、2年連続ASEAN首位です。ところが「縮小」も4.2%へ増え、輸送機器・部品では16.7%に達しました。
好調と苦戦は矛盾していません。市場が成長するほど、顧客構成、販売機能、価格、採用、現地調達の差が業績へ表れます。ベトナム進出そのものが優位性だった段階から、現地で選ばれる仕組みを持つ企業が勝つ段階へ移ったと見るべきです。

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1. 黒字率の上昇は「需要がある」こと
黒字割合は製造業74.1%、非製造業61.2%でした。改善理由では輸出先と現地市場の需要増加が多く、ベトナムが生産拠点だけでなく販売市場として重要になっていることが分かります。2026年についても47.6%が利益改善を見込んでいます。
ただし、需要があることと、自社が選ばれることは別です。日本品質や日系ブランドだけでは比較優位になりにくくなっています。誰に、どの課題で、地場・韓国・中国・欧米企業より何が優れるのかを、営業資料とWebサイトで同じ言葉にする必要があります。
2. 拡大の中心は、生産だけでなく販売機能
拡大予定企業のうち、製造業では57.5%、非製造業では67.1%が販売機能の拡大を挙げました。製造能力を持つだけではなく、国内市場を開拓する営業、マーケティング、顧客対応が次の投資対象になっています。
本社主導の資料を翻訳するだけでは、現地顧客の比較基準に合わない場合があります。価格表示、導入事例、納期、保証、担当者への連絡方法など、ベトナム側が判断に使う情報を現地主導で補う体制が必要です。
3. 縮小企業には、構造変化への遅れが現れる

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輸送機器や部品では、EV化や都市部のガソリン二輪車規制の検討が事業見通しに影響しています。一般機械、繊維・衣服でも縮小回答が1割を超えました。市場全体の成長が、既存製品の需要を保証するわけではありません。
重要なのは、売上減少後に対応するのではなく、顧客の設備投資、法政策、競合の新商品、採用動向を先行指標として見ることです。既存顧客への四半期インタビューと失注理由の記録は、外部レポートより早く変化を知らせることがあります。
4. 現地調達率38.1%は、機会と壁の両方を示す

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2026年1~7月のCPIは前年同期比4.39%上昇しました。人件費、物流費、家賃、原材料費が上がると、企業は価格転嫁を迫られます。消費者側では、低価格への敏感さと、品質・時間・安心に対する支払い意欲が同時に強まり、市場の二極化が進みます。
この局面で中途半端な位置づけは危険です。「最安」でも「選ぶ理由が明確な高付加価値」でもない商品は比較で埋もれます。価格を上げるなら、品質保証、使い方、導入効果、アフターサービスを可視化し、価格差の根拠を顧客が説明できる状態にする必要があります。
5. 人材と行政対応を、成長戦略の前提に入れる
投資環境のリスクでは、行政手続きの煩雑さ67.5%、法制度の未整備・不透明な運用58.7%、人件費の高騰57.3%が上位でした。採用が困難になった企業は48.2%で、北部製造業では76.0%に達します。
拡大計画は売上目標だけでなく、採用できる人数、育成期間、権限委譲、許認可の余裕日数を含めて設計すべきです。本社承認が遅く、現地責任者が動けない組織は、市場機会より先に実行能力が上限になります。
まとめ
ベトナムの日系企業は全体として好調ですが、勝ち筋は変わっています。製造拠点としての優位だけでなく、現地販売、顧客理解、採用、調達、法制度への対応を一つの経営システムとして回せるかが差になります。拡大と縮小が同時に増える市場では、「進出していること」ではなく「変化に合わせて現地で決められること」が競争力です。
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